2021年06月23日

言霊の華 第六三〇号

『日本の懐の深さを知る ある奇蹟の出来事』 その3

二回に亘り、世界史における板東俘虜収容所の奇蹟について述べて参りました。普通でしたらそれで終わりなのですが、どうしても後日談について述べなければならないことがあり、今回もそのことについてお話します。

1920年1月28日(大正9年)、最後の捕虜220名が日独の国旗が振られる中、収容所を後にします。それにより板東収容所は2月8日を持って終了します。活氣に湧き、ハイカラな香りを漂わせていた板東も元の静かで平凡な農村へと戻って行きました。

しかし心の交流を交わした人々の記憶は簡単には消えません。古老たちは子や孫へとその思い出を語り継ぎ、元捕虜たちも帰国してから、板東での素晴らしい体験を多くの人々に語り続けたのです。そして1934年頃、ドイツ中南部の人々を中心に「フランクフルト・バンドー会」が結成され、100人近くが参加したのです。

板東の収容施設は大東亜戦争後、引揚者用の住宅として転用されました。ある日、その住宅に住むひとりの主婦が山で薪を拾い集めて帰る途中、生い茂る雑草に覆われた墓を見つけます(昭和23年のこと)。それはドイツ人捕虜の小さな慰霊碑で、22歳から38歳までの11名の名が刻まれていました。

慰霊碑を見つけた主婦は高橋春枝さんと言います。彼女はシベリアから帰ってきた夫にそのことを告げると、「それは板東の収容所があった頃、病氣やケガが元で亡くなったドイツ兵の眠る墓である」と言われます。とても他人事とは思えない彼女は、雑草を刈ったり、落ち葉を掃き清めたり、お線香やお花を供えたりをし続けたのです。

13年間し続けたことが地元紙の徳島新聞、全国紙の読売新聞で大きく取り上げられました(昭和35年10月6日)。ただちにその反応が現われます。11月29日、西ドイツの駐日大使ウィルヘルム・ハース夫妻、神戸総領事ベーグナー夫妻が墓参に訪れたのです。

町をあげての歓迎の中で、ハース大使は高橋春枝さんに感謝状を手渡し、背をかがめて春枝さんの手を握りしめ、「アリガト・・・」と日本語で言ったきり絶句したのです。表しきれない感動がこみ上げ、言葉を失ったのでした。

このことがドイツ本国でも報道され、フランクフルト・バンドー会の代表、エドアルド・ライボルトが大麻町(板東が改称)宛に手紙を書きます。それでフランクフルト・バンドー会の存在が明らかになったのです。

地元の人の手によって慰霊碑が大事に守られてきたことに感動したフランクフルト・バンドー会から、大麻町に多額の寄附が贈られてきました。そして高橋春枝さんにリュプケ大統領からドイツ功労勲章が贈られました。

大麻町議会はこれを機に、「ドイツ勇士慰霊祭」を毎年開催するようになります。そして映画も作成され、作家の棟田博の「桜とアザミ」が世に発表されました。

鳴門市は「鳴門市ドイツ館」を建設し、ドイツ国民から多くの寄附が寄せられました。ドイツ館オープンを知ったハンブルグ・バンドー会や会員以外の生存者たちからも多くの寄附が集まり、そして鳴門市はドイツのリューネブルグ市と姉妹都市を結びます。

当時、各地の収容所で亡くなった合計85名の美しい合同慰霊碑が鳴門市、大阪市、神戸ドイツ総領事館の共同事業として板東俘虜収容所跡地の裏山に御影石で完成しました。多くの元捕虜たちは、再び板東の地を訪れたい、松江大佐に会いたいと切望したと言います。

板東の地が忌まわしい思い出の地であったなら、決してそうは思わないはずです。この美しい心と魂の物語を知っている日本人はどれだけいるでしょう。何故、学校では教えないのか。最高の道徳、修身の教材、歴史教育の教材がここにあるのに。

松江大佐は立派な偉人でありながら、歴史教育に取り上げられなかったのです。板東の地を再び訪れたフランクフルト・バンドー会の幹部のパウル・クライは言いました。「世界のどこに、バンドーのようなラーゲル(収容所)があっただろうか。世界のどこに、松江大佐のようなラーゲル・コマンダーがいただろうか」と。

このような美しい出来事によって日本とドイツの国際友好の強い絆が結ばれたのは、一人の本物の日本人がいてくれたお陰だったのです。松江大佐(後に少将)こそ、代表的日本人の一人だったと言えるでしょう。

合掌 かむながらありがとうございます  

菅家 一比古

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posted by 事務局 at 13:46| Comment(0) | 言霊の華
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